「どうして部下は自分で考えて動いてくれないんだろう…」「何度言っても同じミスを繰り返す…」
中間管理職になって3年目、私はこんな悩みを抱えていました。指示を出せば動くけれど、自発的に考えて行動する部下が育たない。そんな時に出会ったのが、鈴木義幸氏の『コーチングが人を活かす』でした。
この本を読んで実践したことで、部下との関係性が劇的に変わり、チーム全体のパフォーマンスも向上しました。本記事では、様々な自己啓発本を購読している中で実際に読んで実践した私の視点から、この本の魅力と具体的な学びをお伝えします。
この記事で分かること:
- 『コーチングが人を活かす』の核心的な内容
- 実際に実践して得られた成果
- 30代管理職が本書から得られる具体的なスキル
- この本をおすすめできる人・できない人
『コーチングが人を活かす』の基本情報
著者の鈴木義幸氏は、日本のコーチング界の第一人者として知られ、株式会社コーチ・エィの取締役社長を務めています。1994年からコーチングに携わり、企業のエグゼクティブから若手社員まで、幅広い層へのコーチング実績を持つ方です。
本書は2020年に改訂新版が発行され、初版から20年以上読み継がれているコーチングの名著です。理論だけでなく、実際のビジネス現場で使える具体的な手法が豊富に掲載されているのが最大の特徴です。
こんな人におすすめ:
- 初めて部下を持った若手管理職
- 部下育成に行き詰まりを感じている中間管理職
- チームのモチベーションを高めたいリーダー
- 従来の指示命令型マネジメントに限界を感じている人
読む前の私の状況
私がこの本を手に取った背景には、深刻な悩みがありました。
入社8年目で課長に昇進し、5名の部下を持つことになった私。最初は張り切って「良いリーダーになろう」と意気込んでいました。しかし現実は厳しく、部下は指示待ち状態。自分で考えて動くことが少なく、何かあればすぐに「どうすればいいですか?」と聞いてくる毎日でした。
私なりに丁寧に教えているつもりでした。「こうすればいいよ」「次はこうしてみて」と具体的に指示を出し、時には手本を見せることも。でも、部下は成長しないまま。むしろ、私への依存度が高まっていくばかりでした。
上司からは「もっと部下に任せろ」と言われるものの、任せたら失敗するのが目に見えている。結局、自分でやった方が早いと感じ、プレイングマネージャーとして働く日々。気づけば残業時間は増え、部下のモチベーションは下がり、チーム全体の雰囲気も悪くなっていました。
そんな時、先輩から勧められたのがこの『コーチングが人を活かす』だったのです。

本書の核心的な学び
この本から得られた学びは数多くありますが、特に実務で役立った5つのポイントをご紹介します。
コーチングとティーチングの違い
本書を読んで最初に衝撃を受けたのが、「教える」ことと「引き出す」ことの決定的な違いでした。
私がやっていたのは完全にティーチング。答えを与え、やり方を教え、手本を見せる。でも鈴木氏は言います。**「人は自分で気づいたことしか、本当の意味では理解できない」**と。
コーチングの本質は、相手の中にある答えを引き出すこと。部下は無能なのではなく、自分で考える機会を奪われていただけだったのです。
本書では、ティーチングが適している場面(緊急時、安全に関わる場面、基本的な知識やスキルの伝達)と、コーチングが効果的な場面(問題解決、意思決定、創造的な仕事)が明確に示されています。
この区別を理解してから、私は「今、相手に必要なのはどちらか?」を常に考えるようになりました。
傾聴の本当の意味
「傾聴」という言葉は知っていましたが、本書で解説されている傾聴の深さには驚かされました。
多くの人が考える傾聴は「黙って話を聞く」こと。でも本当の傾聴は、相手の言葉だけでなく、感情、価値観、その背景にある想いまで聴き取ることです。
鈴木氏は傾聴を3つのレベルに分けて説明しています:
レベル1:内的傾聴 – 自分の内側に意識が向いている状態
レベル2:集中的傾聴 – 相手に100%意識を向けている状態
レベル3:全方位的傾聴 – 相手だけでなく、場の空気や雰囲気も感じ取る状態
恥ずかしながら、私の「聴く」はレベル1でした。部下が話している間も「次に何を言おう」「どうアドバイスしよう」と自分の内側で考えていたのです。
実際にレベル2の傾聴を意識して部下の話を聴いたとき、驚くべきことが起こりました。部下が自分から「こうしてみようと思います」と解決策を話し始めたのです。私が何もアドバイスしていないのに。
人は本当に聴いてもらえると、自分で答えを見つけられる。この体験は衝撃的でした。
質問の力
本書の中で最も実践的で、即効性があったのが「質問のスキル」です。
鈴木氏は、質問には「閉じた質問」と「開いた質問」があると説明します。
閉じた質問(クローズドクエスチョン):
「できますか?」「やりましたか?」など、Yes/Noで答えられる質問
開いた質問(オープンクエスチョン):
「どう思いますか?」「何が必要ですか?」など、相手の思考を促す質問
従来の私は「この案件、今週中にできる?」「報告書は確認した?」といった閉じた質問ばかりしていました。これでは部下の思考は深まりません。
本書で学んだ効果的な質問例:
- 「この状況をどう捉えていますか?」
- 「もし制約がなかったら、どうしたいですか?」
- 「うまくいったとしたら、何が起きていますか?」
- 「そのために最初の一歩は何でしょう?」
特に「もし〜だったら?」という仮定の質問は、部下の創造性を引き出すのに絶大な効果がありました。現状の制約に縛られず、自由に考える機会を与えることで、驚くようなアイデアが出てくることもあったのです。
承認のスキル
「承認」も、本書を読むまで誤解していた概念でした。
多くの人が考える承認は「褒める」こと。でも鈴木氏の言う承認は、もっと深いものです。それは**「相手の存在や変化に気づき、それを言葉にして伝えること」**です。
本書では承認を3つのレベルで説明しています:
結果承認: 成果や結果を認める
プロセス承認: 努力や過程を認める
存在承認: その人の存在そのものを認める
私が実践して特に効果があったのは、プロセス承認でした。
例えば、ある部下が提案書を作成したとき、以前なら「いいね」だけで終わっていました。でも本書を読んでからは「この部分、以前より論理構成がしっかりしているね」「お客様の視点で書けるようになってきたね」と、具体的な変化や努力を言葉にするようにしました。
すると部下の表情が変わりました。「見てくれている」「成長を認めてくれている」という実感が、モチベーションに直結したのです。
フィードバックの技術
部下に改善点を伝えるのは、管理職にとって最も難しい仕事の一つです。
本書では、建設的なフィードバックの方法が詳しく解説されています。特に印象的だったのが「SBI法」というフレームワークです。
S (Situation): 状況を説明する
B (Behavior): 具体的な行動を描写する
I (Impact): その影響を伝える
例えば、会議に遅刻した部下に対して:
「今日の朝9時からの定例会議で(状況)、君が10分遅れて入ってきたよね(行動)。その時、議論が中断して、もう一度説明し直す必要があって、みんなの時間が無駄になってしまったんだ(影響)」
このように事実ベースで伝えることで、相手は防御的にならず、改善に意識を向けやすくなります。
さらに本書では、フィードバックの後に必ず「どうしたらいいと思う?」と質問を加えることを推奨しています。これにより、フィードバックが一方的な説教ではなく、成長を支援する対話になるのです。
実際に実践してみた結果
理論を学んでも、実践しなければ意味がありません。私は本書を読んだ翌日から、少しずつコーチング的アプローチを取り入れ始めました。
エピソード1:指示待ち部下の変化
営業部のA君(26歳)は、典型的な指示待ちタイプでした。言われたことは確実にこなすものの、自分から提案することはほとんどありませんでした。
ある日、新規顧客へのアプローチ方法について相談を受けたとき、いつもなら「こうしたらいい」と答えを与えていたところを、ぐっとこらえて質問しました。
「A君は、このお客様の一番の課題は何だと思う?」
「もしA君がそのお客様の立場だったら、どんな提案が欲しい?」
「その提案をするために、何が必要かな?」
最初、A君は戸惑っていました。「わからないから聞いているのに」という表情。でも、私は辛抱強く待ちました。本書にあった「沈黙を恐れない」という教えを思い出しながら。
すると5分後、A君は自分で答えを見つけ始めたのです。「そういえば、前回の面談でこんなことを言っていました」「だとしたら、この資料を作って提案してみます」と。
3ヶ月後、A君は自分から「こういう企画を考えたんですが、見ていただけますか?」と提案を持ってくるようになりました。しかもその内容は、私が考えていた以上に顧客志向で、創造的なものでした。
エピソード2:チーム全体の変化
コーチング的アプローチを続けて半年が経った頃、チーム全体に明らかな変化が現れました。
週次ミーティングの雰囲気が変わったのです。以前は私が一方的に話す時間が長く、部下たちは受け身でした。でも今は、メンバー同士が意見を交わし、互いに質問し合う活発な場になっています。
四半期の売上目標も、前年比120%を達成。これは私のチームの過去最高記録でした。しかも、私の残業時間は月40時間減りました。部下が自分で判断して動けるようになったため、私の承認を待つ時間が減ったのです。
さらに予想外の効果もありました。チームの離職率がゼロになったのです。以前は年に1人ペースで退職者が出ていましたが、コーチングを導入してから、メンバー全員が「このチームで働きたい」と言ってくれるようになりました。
人事評価でも、部下たちから「上司が話を聴いてくれる」「成長を支援してくれる」というコメントをもらえるようになり、これは私にとって最大の報酬でした。

この本の良かった点
実際に読んで実践した立場から、本書の優れている点をまとめます。
理論と実践のバランスが絶妙
コーチングの理論的背景をしっかり説明しながらも、すぐに使える具体的な手法が豊富です。「明日から使える」という即効性があります。
日本の職場環境に即している
海外のコーチング本は文化的背景が違いすぎて応用しづらいことがありますが、本書は日本企業での実例が中心。そのまま自分の職場に当てはめられます。
段階的に学べる構成
基礎から応用まで、ステップバイステップで学べます。初心者でも挫折せずに読み進められる構成になっています。
実例とワークが充実
各章に実際の対話例が掲載されており、イメージしやすいです。また、自己診断やワークシートもあり、読みながら自分の状況を振り返れます。
読みやすい文体
専門用語を使いすぎず、平易な言葉で書かれています。ビジネス書を読み慣れていない人でもスラスラ読めます。
気になった点・注意点
一方で、実践する上での注意点もお伝えしておきます。
即効性を期待しすぎない
本書のスキルは魔法ではありません。部下との信頼関係を築き、効果が現れるまでには時間がかかります。私の場合、明確な変化を感じたのは3ヶ月後でした。焦らず、長期的な視点で取り組むことが重要です。
すべての場面でコーチングが有効とは限らない
緊急時や安全に関わる場面では、明確な指示(ティーチング)が必要です。コーチングに固執しすぎると、かえって問題が大きくなることもあります。
部下によって反応が違う
コーチング的アプローチを好む部下もいれば、「答えを教えてほしい」と感じる部下もいます。相手の状況や成熟度に応じて、柔軟にアプローチを変える必要があります。
自分自身の変化が必要
コーチングは技術だけでなく、「部下を信じる」というマインドセットの転換が求められます。これは本を読んだだけでは身につきません。日々の実践と内省が不可欠です。
完璧を目指さない
私も今でも失敗します。つい答えを言ってしまったり、十分に聴けていなかったり。でも、それでいいのです。完璧なコーチである必要はなく、「昨日より少しでも良く」を目指す姿勢が大切だと本書は教えてくれます。
こんな人に特におすすめ
本書は幅広い層に役立ちますが、特に以下のような方に強くおすすめします。
初めて部下を持った新任管理職
マネジメントの基本を学ぶ最初の一冊として最適です。変な癖がつく前に、正しいアプローチを学べます。
部下育成に行き詰まっている中間管理職
私のように「教えているのに育たない」と感じている方には、目から鱗の内容です。アプローチを変えるだけで、劇的に状況が改善する可能性があります。
チームのモチベーションを高めたいリーダー
メンバーの主体性を引き出し、活気あるチームを作りたい方に。承認や質問のスキルは、チームの雰囲気を変える力があります。
指示命令型から脱却したい管理職
「これからの時代、トップダウンではダメだ」と感じながらも、どうすればいいか分からない方へ。具体的な代替手段が本書には詰まっています。
人材育成に関わるすべての人
管理職だけでなく、先輩社員、メンター、トレーナーなど、誰かの成長を支援する立場にある方すべてに役立ちます。
逆に、こんな方には向かないかもしれません:
- すぐに結果を求める方
- 自分のやり方を絶対に変えたくない方
- 理論よりも精神論を重視する方
本書を最大限活かす読み方
最後に、私の経験から「この本をどう読めば最大限活かせるか」をお伝えします。
まずは一つのスキルから実践する
すべてを一度に実践しようとすると挫折します。まずは「傾聴」だけ、「質問」だけと、一つのスキルに絞って1ヶ月実践してみてください。
読後ノートを作る
各章を読んだら、「自分の状況に当てはめると?」「明日から何をする?」をノートに書き出します。私はこのノートを毎週見返すことで、学びを定着させました。
定期的に読み返す
最初に読んだときと、3ヶ月後、半年後では、響く内容が変わります。実践しながら読み返すことで、理解が深まります。私は年に2回、この本を読み返すようにしています。
実践日記をつける
「今日はこのスキルを使った」「うまくいった/いかなかった」を簡単にメモする習慣をつけると、自分の成長が可視化されてモチベーションになります。
同僚と読書会を開く
可能であれば、同じ立場の同僚と一緒に読んで、感想や実践例をシェアし合うと、学びが何倍にもなります。
まとめ
『コーチングが人を活かす』は、私のマネジメント人生を変えた一冊です。
部下育成に悩み、自分のやり方に限界を感じていた私に、この本は新しい視点と具体的な手法を与えてくれました。コーチングを実践したことで、部下は自ら考え行動するようになり、チームの成果も向上し、何より私自身が管理職としての仕事を楽しめるようになりました。
「人は教えて育てるもの」という固定観念から、「人は自ら成長する力を持っている」という信念への転換。これが本書の最大のメッセージです。
もしあなたが今、部下育成に悩んでいるなら、ぜひこの本を手に取ってみてください。そして、一つでもいいから実践してみてください。あなたのチームにも、きっと変化が訪れるはずです。
マネジメントは技術です。正しい技術を学び、実践すれば、必ず結果は変わります。『コーチングが人を活かす』は、その技術を学ぶための最良の教科書だと、私は確信しています。
書籍情報
タイトル:『コーチングが人を活かす』
著者:鈴木義幸
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2020年9月(改訂新版)
関連書籍
- 『新版 コーチングの基本』(日本実業出版社/コーチ・エィ)
- 『リーダーが身につけたい25のこと』(鈴木義幸)
- 『最高のリーダーは何もしない』(藤沢久美)
この記事があなたのマネジメントの一助となれば幸いです。部下の成長を支援することは、あなた自身の成長にもつながります。一緒に、より良いリーダーを目指しましょう。
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