予備校が培った「文化」を深掘り
『予備校盛衰史』は、1970年代から90年代を「予備校文化」の黄金時代と位置づけています。当時、大学受験に失敗しても予備校に通うことが一般的であり、浪人生は社会現象の一部でした。この時代、予備校は単なる受験対策の場ではなく、高校や大学とは異なる「学問への入り口」として機能し、独自の熱狂と文化を生み出していたのです。
現代は推薦入試やAO入試が優勢となり、予備校の役割も大きく変化しました。本書は、そうした時代背景の中で見失われがちな予備校本来の価値を捉え直し、その盛衰の歴史を丹念に描き出しています。当時の予備校がもたらした「知」の空間や、受験を超えた学びの場としての側面が、詳細に解説されています。
伝説の予備校講師・出口汪氏との対談が実現
本書の増刷決定に合わせ、さらなる注目を集めているのが、教育ジャーナリストである著者・小林哲夫さんと伝説の予備校講師・出口汪さんの対談です。ヒューマンキャンパス、代々木ゼミナール、東進ハイスクールで講師を歴任し、「現代文のカリスマ」として知られる出口汪さんと小林哲夫さんの対談は、『中央公論』2026年4月号(3月10日発売)に掲載されています。対談のテーマは「受験を超えた『知』があった場所 あの熱狂は『時代の徒花』だったのか」とされており、予備校が持つ深い意味について語り合われています。本書と併せてご一読いただくことで、予備校文化への理解がさらに深まることでしょう。
著者・小林哲夫氏からのメッセージ
増刷決定を受け、著者である小林哲夫さんからは喜びのコメントが寄せられています。小林さんは、「えっ、こんなところにも」と驚くほど、世の中にはさまざまな分野にマニアがいることを指摘し、予備校もその一つであると述べています。予備校講師を神のごとく崇める人々が少なからず存在し、本書が彼らの琴線に触れたことへの驚きと感謝が込められています。また、SNSでは「社会に目を見開かせてくれた」「学問の世界に誘ってくれた」といった予備校経験を語る声が多く見られ、本書がそうした読者の共感を呼んだことがうかがえます。小林さんは、高校や大学とはひと味もふた味も違う予備校の世界を、ぜひ楽しんでほしいと語っています。
本書の試し読みと構成
本書の内容に興味をお持ちの方のために、現在、試し読みが公開されています。増刷を記念して、新たに記事も追加公開されました。
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#1<まえがき+第1章より>: なぜ高校より面白かったのか? 「学問への入り口」として予備校を捉え直す。【予備校盛衰史】
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#2<追加公開分 3月10日公開>: 「秩序」と「束縛」から解き放たれた「予備校」という空間【予備校盛衰史】
本書は、以下の構成で予備校の歴史と文化を多角的に考察しています。
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まえがき: 本書執筆の動機と予備校文化への問いかけが語られています。
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第一章 いま予備校はどうなっているか: 現代の予備校の現状と、かつての姿との比較を通じて、その変遷を紐解いています。
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第二章 草創期の興亡――明治から戦中期まで: 日本における予備校の黎明期、明治時代から戦中期にかけての設立と発展の歴史が描かれています。
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第三章 拡大期の群雄割拠――戦後から最盛期まで: 戦後の高度経済成長期における予備校の爆発的な拡大と、各予備校がしのぎを削った最盛期の様子が解説されています。
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第四章 爛熟期の寡占・淘汰・発展――八〇年代から現代まで: 1980年代以降の予備校業界における寡占化、競争による淘汰、そして新たな形での発展の過程が追われています。
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第五章 予備校のアイデンティティ――その効用とトラブル: 予備校が持つ独自の教育的価値や、時に発生したトラブル事例を通じて、そのアイデンティティが考察されています。
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第六章 予備校文化とは何か――束縛をはね除けた不気味なアナーキスム: 高校や大学とは一線を画す、自由で型破りな予備校の「文化」がどのようなものであったのかが深く掘り下げられています。
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第七章 「文化」を創り出す人びと――駿台フォーラム・文教研・ベ平連: 予備校文化を形成する上で重要な役割を果たした具体的な運動や、それに携わった人々について紹介されています。
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第八章 未来の予備校――少子化に向けたサバイバル: 少子化が進行する現代において、予備校が今後どのように生き残り、発展していくべきかという未来への展望が語られています。
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主な参考文献: 本書を執筆する上で参照された多岐にわたる文献がリストアップされています。
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あとがき: 著者からの結びの言葉が綴られています。
著者紹介

本書の著者である小林哲夫さんは、1960年生まれの教育・受験ジャーナリストです。『大学ランキング』編集長を務めるなど、長年にわたり教育分野の取材と執筆に携わってこられました。主な著書には、『神童は大人になってどうなったのか』(朝日文庫)、『改訂版 東大合格高校盛衰史』『京大合格高校盛衰史』(ともに光文社新書)、『ニッポンの大学』(講談社現代新書)、『中学・高校・大学 最新学校マップ』(河出書房新社)、『「旧制第一中学」の面目:全国47高校を秘蔵データで読む』(NHK出版新書)、『高校紛争 1969-1970』(中公新書)など、多数の著書があります。
書籍情報
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書名: NHK出版新書755『予備校盛衰史』
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著者: 小林哲夫 著
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発売日: 2026年2月10日
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ISBN: 978-4-14-088755-4
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定価: 1,188円(税込)
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判型: 新書判
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ページ数: 320ページ


